紹介:『共産党宣言 彰考書院版』
◇『共産党宣言 彰考書院版』(2008年、アルファベータ)
- 作者: カールマルクス,フリードリヒエンゲルス,幸徳秋水,堺利彦
- 出版社/メーカー: アルファベータ
- 発売日: 2008/11/01
- メディア: 単行本
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はて、私家版みたいなもんだろうか、と思って手に取ったら、
クラシカルミュージック系の本を出してるアルファベータ社の
中川右介があとがきを書いている。
なになに、中川の祖父 藤岡淳吉は高知出身の左翼出版人で、
戦後すぐに幸徳秋水&堺利彦訳の『共産党宣言』を出したとな。
社業の他に、淳吉は戦犯出版社追及運動の先頭にも立ち、
大手出版社を出版界から追放しようとした。
窮地に立った大手出版社側の誰かが、淳吉の過去を思い出した。
「あいつは、偉そうなことを言っているが、
自分が出した本を焚いた男ではないか」というわけだ。
実際は焚書などしてはいないのだが、
「日比谷公園で焚くと言った」のは事実だ。
そのことを書いた新聞記事をGHQに提出し、密告した者がいたらしい。
GHQが発した公職追放令のなかの、
G項(その他の軍国主義者・超国家主義者)第一号として、
淳吉はリストアップされてしまった。…
…
…淳吉は失脚した。そして、出版会の戦犯追及運動は、
こともあろうにその指導者だった淳吉が戦犯とされて
しまったことで破綻した。…このことをもって、
淳吉のせいで日本の出版社、さらには文化人の戦争中の言動に対する
責任追及はうやむやになったと書いた本もある。
(同書 pp.121-122)
その他のエピソードを拾う。
初めに藤岡淳吉は鈴木商店 大連支店の見習いになった。
鈴木商店の大番頭 金子直吉が高知県出身だったからである。
時はロシア革命の頃(1917)であった。彼は社会主義に傾倒する。
郷土の偉人、幸徳秋水の影響も大であった。
その後、淳吉は金子直吉から金をもらって堺利彦のところへ行くが、
関東大震災(1923)の戒厳令のとき、当局にアジトを発見され逃亡。
若き社会主義者は再び金子直吉から金をもらって満州に逃げるが、
長春に着いたところで尾行に声をかけられお縄となる。
いやまぁ、金子直吉から警察の方に連絡が行ってたと思いますけどね。そういうモンでしょ?